WEB限定記事
い氣い氣ピープル ハッピーライフ
by Yasuhisa Oharada
気のエネルギーが充満した温かな雰囲気のカラオケ酒場
バツイチ同士が結婚して37年になる。兵庫県尼崎市でカラオケ酒場を経営している。マスターとママだけの小さな飲み屋。飲んで歌って人生相談もあって、人情味あふれた人と人の交流の場だ。
~兵庫県・村田初美さん
自分たちも楽しめるようなカラオケ酒場にしよう
酒場
―
と聞いて、何とも言えない安らぎを感じる人も多いのではないだろうか。
夫婦2人で切り盛りする小さな酒場。ご主人の真さん(
73
)は若いころ、フォークソングのバンド活動をしていた。
「テレビにも出たことあるんですよ。コンサートもやっていたし」
奥さんの初美さん(
63
)が言う。
「そんな昔の話、いいじゃないか」
真さんが話をさえぎる。仲睦まじさが伝わってくる。
2人が知り合ったのは、フォークバンドよりももっとあとの話だ。当時、真さんは経営していた婦人服の卸の店を閉めたばかり。違う道を模索していた
「あまり計画性のあるほうじゃないので、思い付きでいろいろやりました。それでもなぜかうまくいきました」
しかし、「これだ」と思う仕事に出あえないでいた。一方の初美さんは離婚直後。これからどう生きて行くか、彼女も模索中だった。
「これだと思ったよ」
真さんは、仕事では見つからなかった「これだ」を、初めてあった初美さんに感じた。迷える2人の運命的な出会い。2人は一緒に暮らし始め、結婚をする。
「田舎暮らしをしようと思って滋賀県に引っ越したんですわ。婦人服のお店を貸していたので家賃が入ってくるから、それで生活ができたからね」
大好きな猫たちとの悠々自適の生活。これが続けば絵に描いたような幸せな日々だった。ところが景気が悪化。店子が出てしまって家賃収入がなくなった。どうするか。手もとにあったお金で株を始めた。
「これが失敗ですわ。まあ、景気の悪い時期ですからうまくいくはずがないわな。それで、滋賀で建てた家も売って、さてさてどうしようということで、取り敢えずは、尼崎の実家にやっかいになることにしました」
実家に住みながら借家を探した。しかし、猫が6匹もいたので、なかなか貸してくれるところがない。あちこち回って、やっと古い家を見つけて、そこで再スタートを切ることになった。
「再スタートと言っても、何をすればいいのか、さっぱりわかりません。2人で『どうしようか』と悩んでいましたよ」
「喫茶店とかええかなて言うてたよね」
「そうそう、軽井沢へ遊びに行ったとき、ホテルにカラオケをやっている喫茶店があって、夜はバーをやってて、こんなのもええなと言うてたことあったもんな」
「でも、お金がないから、おしゃれなショットバーもできへんしね」
「尼崎に立ち飲みカラオケの店があって、これならできるかもしれんと、始めたのが、今の生活のスタートですわ」
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年前の話だ。
15
人くらい入るお店。ビールと焼酎と日本酒とウイスキー。初美ママがおかずを作って出す。しばらく立ち飲みでやっていたが、お客さんが座りたいと言ってどこかから椅子を調達してくるようになって、座る人あり立ち飲みの人ありとなったのだ。
お客さんは
20
代の若者から
70
代、
80
代の年配の方まで幅広い。料理1品と飲み物で800円。カラオケは無料で歌い放題という破格の値段。
「毎日飲んで歌える店があるとええなと思うじゃないですか。自分たちでも行けるようなお店、行きたいと思えるお店にしたいと思っています。2人ともお酒も歌も大好きやから、お客さんと一緒に楽しんでいます」
真さんが笑う。初美さんも満足そうな様子だ。
若い女の子に人気のママさん。人生相談を頼まれる
最初の店を8年ほど続けたとき、立ち退きの話があり、別の場所に移ることになった。
「前は1時くらいまでしか歌えなかったけど、今のところは何時でもオーケー。やりやすくなりましたわ」
夜の7時にオープン。終わるのは雰囲気次第。朝方の3時、4時になるのはいつものことだと言う。
「まあ、あまり細かいことは決めないで、気楽にやっています。常連さんも増えてきて、毎日、楽しいですよ」
想像するに、真さんは何かに縛られるのは嫌なタイプのようだ。サラリーマンには向かない。気ままに楽しみながら働く。紆余曲折はあったけれども、立ち飲みカラオケ酒場はぴったりの仕事かもしれない。
初美さんはどうか。これも想像だが、人とかかわることは好きなのだろう。面倒見のいいお母さんという感じだろうか。
「初美はね、若い女の子に人気があるんですよ。いろいろ相談されているみたいですよ」
真さんがおじさんたちと飲んで歌って盛り上がっているときに、お店の隅で初美さんが若い子の相談に乗っている。そんな光景が浮かんできた。
「私は離婚もしているし、病気もしているし、けっこう波乱万丈だから、若い子には参考になることもあるんじゃないですか。
別に相談の乗りますなんてひと言も言ってないのに、向こうから『ちょっと相談があるんですけど』と言ってくるんですよね。私にはそんな雰囲気があるんでしょうかね(笑)」
あるのかもしれない。初美さんは、体調を悪くしたことがきっかけでずっと気功を習っている。宇宙にある氣のエネルギーを自分の体やさまざまなグッズを使って中継するという気功で、初美さん自身がそのおかげでとても体調が良くなった。初美さんからは安心して相談できるエネルギーを発せられていて、それをお客さんは感じるのかもしれない。
お店に入ると、天井からはピラミッドが吊り下がっている。
「よく、『これは何ですか?』ってお客さんに聞かれます。ここぞとばかり、気の話をしてあげるんです(笑)。けっこう、みなさん興味をもってくれて、『ちょっと肩が凝っているんだけど気功やってくれる』という人もいたりして、気を中継するグッズを使ってマッサージをしてあげると、『わあ、軽くなった』ととても喜んでくれます」
何とも和やかな場が作られている。これも気の力なのだろうか。
「よくわかりませんが、気を調えておくと、いいお客さんばかりが来てくださいます。ありがたいことです」
そういうこともあるのだろう。話をお聞きしていてふと思った。朝から晩まで、年がら年中、ずっと一緒にいるのに、二人三脚の足取りが乱れないのも、きっと気のおかげに違いない。
「カラオケ酒場」
酒とカラオケを介してみんなが元気になれる場。コロナウイルスの影響で人と人との関係が断ち切られてしまっている。騒ぎが落ち着いたら、こういう温かな酒場で人とつながる喜びを感じたいものだ。
カラオケ酒場 キラリン
〒660
–
0882
兵庫県尼崎市昭和南通り4丁目
68
090
–
9289
–
0515
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