帯津良一
vol. 141

さまざまな方法を駆使して、免疫力のアップに努める

漢方薬を使うことでもっと治療の幅が広がるはず

 テレビをつければ新型コロナウイルスの話題ばかりでうんざりしますが、これだけ社会を激動させているのですから致し方ないのかもしれません。

 ワクチンが開発されているというニュースもあります。ワクチンは有効な手段ではありますが、私はワクチンばかりに期待するのではなく、漢方薬なども上手に使えばいいと思います。

 アメリカやヨーロッパ、南米に比べると、日本は感染者、重症者ともに少なく、中国や韓国、東南アジアでも、その傾向はあります。

 その理由はわかりませんが、BCGの接種をしているからだという説もあります。東洋ではBCGが義務化されているところが多く、西洋では義務化されていないのは事実なので、その可能性はあると思います。

 BCGは結核菌を弱毒化したワクチンのことで、免疫力を高める作用があります。免疫力には自然免疫と獲得免疫があります。体内に異物が侵入すると自然免疫が働きます。自然免疫だけで対処できないときには獲得免疫が働き、抗体を作るなどして、より強力に異物を排除します。BCGを打てば自然免疫が高まります。ウイルスに対する最前線の防御を強くするのです。BCGがどれほどの効力を示しているかはわかりませんが、免疫力が新型コロナウイルス対策の鍵を握っているのは間違いのないことだと、私は思っています。

 免疫力を高める方法はワクチンだけではありません。私は漢方薬はとても有効だろうと考えています。

 中国には、2000年ほど前に、という医者が「」という漢方医学書を残しました。張仲景の一族が熱性の病気で次々と亡くなりました。彼は、古い文献を集めてどうすれば治るのかを研究しました。それをまとめたのが「傷寒論」で、長い間、中国医学の中核となっている書物です。

 「傷寒論」の傷寒というのは熱性の急性病ということです。つまりは新型コロナウイルスのことでもあります。2000年も前からウイルスによる病気はあって、多くの人が治療法を模索してきました。その基礎が傷寒論には出ています。

 中国は感染者を抑えることができていますが、傷寒論をもとに漢方薬で対処したようです。古典に新しい処方をプラスして

新型コロナウイルスに対処したのです。

。葛(かっこんとう)や麻(まおうとう )、小(しょうせい)、(りゅうとう)など、免疫力を上げるにはとても有効な漢方薬はいくらでもあります。

 もちろん、集中治療室で呼吸器を付けないといけないような重症の人に使えとは言いません。症状のない人、軽い症状の人に使うようにすれば、治療の幅がもっと広がると思うのです。

免疫力を高める食事や運動も大切だが、続かないと意味がない

 私はがん治療にも漢方薬は積極的に使っています。がんを消せるかどうかはともかく、胃の具合が悪かったり、下痢、便秘、からだのだるさなど、症状によっていくらでも薬はありますし、効果も出ています。中には、漢方薬と丸山ワクチンでがんが消えた人もいました。漢方薬だけではなく、ホメオパシーやサプリメントも上手に使えば、新型コロナウイルスの対抗策になるはずです。氣功も有効です。太極拳などの内氣功でも真氣光のような外氣功でもいいでしょう。自分が気になった氣功を毎日の生活に取り入れるだけで、予防にも治療にもなるはずです。

 食事も大切です。私の食養生は、好きなものを少しだけというものです。いくらからだにいいものでも、嫌々食べていては効果は半減です。好きなものだからと言ってお腹いっぱい食べるとからだに負担がかかります。世の中にはたくさんの食養生があります。ポピュラーなのは玄米菜食です。生菜食もあります。食の好みは人それぞれですが、大事なことは続けることです。苦痛な食事ではとても長続きしません。私の病院に入院している方で、玄米菜食に取り組んでいる人は何人もいますが、おいしそうに食べている人もいれば、中には眉間にしわを寄せて玄米をにらんでいる人もいます。なかなか箸が進まないと、家族の人が「食べないとダメですよ」と発破をかけたりします。これではいくら玄米がいいと言っても栄養にはならないのではないでしょうか。たまには息抜きをして、少しでも長続きするようにしないといけません。食事の内容だけで健康が維持されているわけではありません。食事は栄養摂取であると同時に、楽しみだったりコミュニケーションの手段だったり、さまざまな側面があります。食を語る場合には栄養面だけが取り上げられがちですが、もっと多面的に見ていただければと思っています。

 適度な運動も必要です。私の場合は、毎朝、氣功をしていますし、診療中も立ったり座ったりすることも多く、けっこうな運動量になるかと思います。移動中はなるべくエレベーター、エスカレーターを使わず階段を上るようにしています。日々の生活の中に運動の要素を入れることで運動不足ならないよう心掛けています。

 もちろん、ジョギングやウオーキングを楽しむことは大賛成です。でも、修行のようにやる必要はないと思います。ステイホームになって家庭菜園を始めた人も多いと聞いています。農作業もいい運動になると思います。自然に触れるのは精神的にもいいでしょう。とにかく、楽しみながらからだを動かすことが一番ではないでしょうか。

 あとは心構えです。新型コロナウイルスの感染者数が増えてきたということで、不安を感じている方も多いかと思います。心配や不安や恐怖が続くと免疫力が下がることがわかっています。これだけネガティブなニュースを見せられると不安になるのもわかりますが、あまり悲観的になり過ぎないことです。心配しても不安になっても、状況が変わるわけではありません。適度に警戒しつつ、日々やるべきことに集中した方がいいでしょう。

 私はこころのもち方としては、ときめきが大切だとずっと言ってきました。コロナのことで世の中はどんよりとしていますが、それに巻き込まれることなく、ときめきを探してください。大きなときめきじゃなくていいのです。ちょっとしたときめきを積み重ねていくと、いつか大きなときめきが訪れます。

 私は、何度も言っていますが、一日一生懸命に働いて、クタクタになって飲むお酒が最高のときめきです。疲れもストレスも吹っ飛んでしまいます。そして、今日のことはすべて忘れて、明日のことは何も考えずにゆっくりと休みます。朝、目が覚めたら、生きていたことに感謝をし、今日を最後の日と思って働くのです。