コロナが一向に終息しないので不安に思っている方も多いことでしょう。ワクチンについてよく聞かれますが、ワクチンにしても治療法にしても、万人に効果があるものはないと思った方がいいと思います。インフルエンザも、毎年ワクチンを打っているのにいつも感染すると言う人はいます。
ワクチンの相談を受けたとき、私はこう答えています。
「コロナが怖くて不安な人は打ってください。平気な人は打たなくていいのではないでしょうか」
私は日頃から太極拳をやっていますので、コロナへの不安はまるでありません。だから打つつもりはなかったのですが、事務の責任者から、「先生が受けないとしめしがつきません」と言われたので、仕方なく打つことにしました。インフルエンザのワクチンも医療者は義務になっていますので、毎年打っていますが、義務でなければ、打たないだろうと思います。ワクチンを否定しているわけではありませんが、人間には免疫力という強大な味方がついています。免疫力をしっかりと鍛えておけば、インフルエンザだろうとコロナだろうと大丈夫だと私は信じています。私の患者さんであるがんの方たちは、一般的には免疫力が低下していると思われますので、ワクチンも含めて、免疫力をいかに高めるかを考えるようアドバイスしています。コロナをきっかけに免疫力を高めれば、それががんに対して効力を発揮する場合もあるでしょう。
免疫力を高めるにはいろいろな方法があります。食事も運動も大切です。
私は呼吸法を重視しています。中国には数え切れないほどの呼吸法があります。健康長寿にこだわる国ですから、そこで呼吸法が広がっているのは、健康法としてすぐれているからでしょう。
中国の呼吸法のルーツは「吐納(とのう)法」と呼ばれ、養生の根幹をなしています。
吐納とは、「古きを吐いて、新しきを納める」という意味です。
東洋式の呼吸法は吐く息に重点が置かれているのが特徴です。普通の呼吸では、吐く息、吸う息を意識することはありません。自然に吐いて吸っています。
それでも、呼吸は酸素を取り入れてエネルギー源にするものだという考え方が定着していますので、吸う息にウエイトが置かれるのは仕方のないことです。深呼吸をするとき、ほとんどの人は思いっきり息を吸い込むと思います。これは西洋式のやり方です。
東洋式の呼吸法は、吐く息を意識します。吐くときに神経を集中し、静かにゆっくりと吐き出すことが大切です。
免疫力を高めるためには、東洋式の吐く息を重視した呼吸法を行なってほしいと思います。
吸う息と吐く息の違いを医学的に見ていきたいと思います。私たちの体内には、内臓や血管、筋肉の働き、体温の調整などを司っている自律神経と呼ばれる神経があります。自律神経失調症という病名をお聞きになったことがあると思います。特別な病気があるわけではないのに、自律神経が不調のために頭痛、めまい、肩こり、胃もたれ、下痢などの症状が起きるものです。
自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経は内臓の働きを高めたり興奮させたりします。副交感神経はリラックスさせる神経です。
2つの神経が、昼間は交感神経が優位になって活動的にさせ、夜は副交感神経が優位になって心身をゆったりとさせるように働いています。
自律神経は呼吸とも大いに関係があります。息を吸うときには交感神経が働き、息を吐くときには副交感神経が働きます。びっくりしたとき、恐怖を感じたとき、ハッと息を吸うと思います。交感神経を優位にして、逃げたり戦ったりする体勢を作るのです。