養生が大切な時代になったと思います。新型コロナウイルスのワクチン接種も進んでいるようです。しかし、ウイルスは変異するし、まったく違う種類のウイルスが出現する可能性もあって、ワクチンを打ったからと言って安心できるものではありません。あくまでも一時しのぎと考えた方がいいと思います。
私が言う養生というのは生命場のエネルギーを高めることです。「攻めの養生」と私は呼んでいます。
生命場のエネルギーが高まれば自然治癒力もパワーアップして、病気になりにくいからだになります。そうすれば、ワクチンを打たなくてもウイルスに負けることはありません。
新型コロナウイルスをきっかけに、一人でも多くの人に養生の大切さを知っていただければと思っています。
私は、養生についてお話しするときには、「食の養生」「こころの養生」「氣の養生」と3つに分けてお話ししています。
今は、多くの人が不安を抱えて生きています。食はもちろん大切ですが、優先順位から言うと、こころや氣という面から養生を考えることが必要かもしれません。
私は長年がんの治療に携わっています。たくさんの患者さんを診てきて痛感するのは、こころの持ち方の大切さです。私たち医者は、治療法を決めるのも大事な仕事ですが、患者さんのこころのケアをおろそかにしてはいい結果を得ことができません。
平気で「余命1年です」と宣告する医者がいます。そう言われたときに患者さんはどんな気持ちになるでしょうか。余命を宣告されて希望をもつ人は一人もいないでしょう。落ち込みます。絶望します。そうすると、自然治癒力が低下して、病状は余計に進行します。
がんが全身に広がっているのに「大したことないですよ」とウソを言うのは間違っています。大変な状況には違いありませんが、末期のがんから生還している人はたくさんいます。あきらめないで治療に取り組めるように患者さんを導くのも医者の大切な仕事だと思います。
私はこころの養生の基本は「希望」と「ときめき」だと考えています。
たとえ末期がんであっても、「来春、孫が小学校へ上がるので、それまではがんばるぞ」という希望ならもてるはずです。「娘の花嫁姿を見るのが楽しみだ」「元気になったら好物のうなぎを食べるぞ」「妻には苦労をかけたから温泉でも行くか」といったことも希望につながります。
そして、いつも胸に希望を抱いていると、そこにときめきが生まれます。
いざと言うときに希望やときめきをもつために、日頃から心掛けておいてほしいことがあります。
人間は本来、「かなしくてさみしい存在」だということを頭に入れておいてほしいのです。よく、免疫力を高めるには明るく前向きになるといいと言われます。私も一時、そう思って心理療法を治療に取り入れたこともありました。しかし、明るく前向きでいると、検査結果が悪くなった途端にドーンと落ち込んでしまうことが多いとわかりました。
それよりも、かなしみやさみしさをベースに持っていると、検査結果がどうあろうと体調が良くなくても、こころが大きく揺らぐことはありません。
私たちの魂は、遠い虚空から一人で旅をしてきて、いずれは一人で帰っていきます。一人旅のかなしみ、さみしさを抱えて地球にやってきました。そのときの気持ちを思い出すことで、人は逆境に強くなります。
かなしさ、さみしさを基盤に持って生きていれば、いつまでもかなしい、さみしい状態ではいられませんので、いつの間にか明るく前向きになれます。そして、またかなしみ、さみしさに戻っていく。そんな循環ができることで、こころの揺れは小さくなるのです。