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い氣い氣ピープル ハッピーライフ

by Yasuhisa Oharada

体操の指導で目指すのは介護のいらない体作り!

~熊本県熊本市・井原知賀さん

 ここ数年、あちこちでさまざまな災害が発生し、たくさんの人が犠牲になっている。体が不自由なために逃げ遅れてしまう高齢者も多い。日ごろから体を動かしておくことがいかに必要か。それも、たっぷりと酸素を取り入れ、血流を良くする動きは健康でいるためには必要不可欠。井原知賀さんは、自給自足の体作りをテーマに、健康体操のインストラクターとして熊本県内を飛び回っている。

現代人は運動不足。日々、意識して体を動かすことが必要

小原田泰久 井原さんは熊本市在住。主に高齢者を対象に、ヨガと呼吸法を取り入れた体操を指導している。明るい声がすてきだ。話しているだけで元気をもらえる。

「私が指導している体操は、ただ体を動かせるだけではなくて、ヨガをベースに呼吸法を取り入れた『ラフィーラ体操』というものです。細胞にたくさんの酸素や栄養素が行き渡り、体の芯から元気になれます」

 三重県松阪市に住んでいるときにインストラクターの資格をとり、1997年(平成9年)に熊本に引っ越してから教室を始めた。今は熊本市や玉名市のスポーツクラブ、公民館、体育館、スタジオなどで、ほぼ毎日、指導をしているそうだ。個人指導も始めた。車で月に1700キロほど移動をしているそうだ。目の回る忙しさだが、大切な仕事をしているという実感があるので、休みがほとんどなくても苦にならないと言う。

「参加者は50歳代から70歳代の方がほとんどです。少ないところだと5人くらい。多いと50人くらいが集まってくださいます」

 高齢になるとどうしても足腰が弱ってくる。毎日散歩をしたほうがいいとはわかっていてもなかなか続かない。中には、散歩で膝を痛めてしまう人もいる。高齢者の運動は自己流でやるのではなく、きちんとした指導者のもとでやったほうがいいだろう。

「昔の高齢者は今の人とは違って体力があったと思います。家事でも、薪割り、水汲み、炊飯は当たり前。洗濯も手でやるわけだし、掃除だって雑巾がけとか大変でした。毎日の仕事だけで十分に体を使っていましたが、今は、電化製品がみんなやってくれるので、どうしても運動不足になってしまいます。

小原田泰久 移動も、昔は歩きがほとんどでしたが、今は車を使います。便利で楽な分、足腰は弱ってしまいます。

それに大気汚染とか食品添加物など、健康を害するものがあふれています。免疫力も低下して、長生きはしても病気がちだったり体が不自由だという方は多いと思います」

 だからこそ、意識して体を動かすことが必要なのだ。それも偏った動きではなく、血流やリンパの流れをしっかりと意識した運動をしないといけない。

「私たちは『自給自足の体作り』と言っています。自分の体は自分で丈夫にすることが必要です。自然治癒力を高めれば、高齢になっても元気でいられます。

 一年前の西日本豪雨のときに、家に水が迫ってきて2階へ逃げようとした高齢者がいました。でも、膝が悪くて階段を上れずに、水に飲まれてしまいました。

 ああいう悲劇はなくさないといけません」

 そのためには、自分の体は自分で作るという意識をもち、そうできるだけの体力を身に付けないといけないと、井原さんは言う。

体操と気功の組み合わせで自分の体は自分で作る指導を

小原田泰久 日本人の平均寿命は男性が81歳弱、女性が87歳強。世界でもトップクラスだ。しかし、日常生活が制限されることなく送れる健康寿命を見ると、男性が72歳強、女性が75歳弱とかなり下がる。男性で約9年、女性で12年以上、健康を害した状態で過ごさないといけないという現状があるのだ。この数字を見る限り、とても快適な老後が送れているとは思えない。大切なのは健康寿命を少しでも伸ばすこと。そのためには日ごろの努力が必要となる。

「最終的には介護のいらない体作りを目指しています。自分の体は自分で作る。どんなに世の中が進歩しても、私の筋力や柔軟性を人にあげることはできません。自分で努力して手に入れないといけないわけです。

 その手助けを少しでもできればうれしいなと思っています」

 一人暮らしの老人が増えてきている。自分の体は自分で作る必要性はこれからますます高まっていくだろうと思う。

「体に痛みがあって動くのが苦痛だと言う人は、動かせるところだけでもしっかりと動かせることで、血流が良くなり、痛みが軽減することもあります。あきらめないで体を動かすことです」

 体操に加えて井原さんがやっていることがもうひとつある。気功だ。体操の指導を始めて半年後、全身リウマチで苦しんでいた父親が気功の治療を受けるようになった。気功師と呼ばれる人が発する気を受けることで体調が良くなるというものだ。井原さんもとても興味をもって、それを習うことにした。

「気功ができるとすごく便利です。膝が痛い人でも気功によって少しでも楽になれば体操に集中することができます。相乗効果があるんですね」

 今では月に12回、熊本市内で体操と気功を組み合わせた教室を開いているそうだ。

「高齢になると体を動かさなくなります。動かさないとますます動かなくなります。その悪循環を断ち切るためには、この組み合わせはすばらしいと思っています。

 年を取ったからとあきらめないことです。若いときのように走り回ることはできなくても、生活に不自由しない程度の動きならいくらでも維持できるし、取り戻せます」

 自給自足の体作り。自分の体は自分で作る。これからますます高齢化が進む中、ますます必要とされる号令であり、その実践が広がることで健康寿命を伸ばすことができる。


井原さんの連絡先
ci380087@icloud.com