居ても立ってもいられず、義父の知り合いの職人に弟子入りした。初めてハンコを彫る感覚はとてつもない快感だった。時間を忘れて細かい作業に熱中した。
「起きていられなくなりました。家内は自分が気功で体調が良くなったので私にしきりにやるようにすすめました。私は理屈が通らないものは納得できないところがあって、気功を怪しいものと決めつけていました。でも、毎日、家内が私に気を入れてくれると変化が起こってきて、歩けるようになったのです。
2017年には黄綬褒章を受賞。印影の美に一目ぼれしてから約30年。苦難の壁を一つひとつ乗り超えて、彼は職人として最高の栄誉を次々と受けることになった。