Tacae Nakagawa

Professional Singer

声を出して自分だけのスイッチ
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音だますいっち Vol.17

 通常の生活に戻りつつあるものの、まだまだライブ会場へは足が向かない毎日を送っています。最近ではオンラインでの配信ライブが、もう普通に行われていて、演奏する側も観る側も慣れてきました。つい、3ヶ月前までは「オンラインでは音楽の良いところが伝わりにくいのではないか?」と思っていたのが嘘のように、私も普通にオンラインでのライブを楽しんでいます。  

 ある日は部屋着のまま寛いで。ある日はお出かけ着で部屋を間接照明にし、目の前にお料理やお酒を準備して。また、ある日はお風呂の中でも聴きました。もし、あちら側から私が見えたなら、とんでもない姿ですが、どんな格好をしていても、何かをやりながらでも、ライブ感のある音楽が聴けるのは好都合に楽しめて最高!と思うようにもなりました。  

 オンラインは比較的時間も制限されず、好きな場所で聴くことができ、他の聴衆を気にする事もなく、音楽に入り込む事ができるのは良いところです。

 反面、特別感はなくなります。ライブへ行く時は、わざわざ会場へ足を運んで聴きに行くことで期待感も高まりますし、その会場の雰囲気も楽しむことができますが、オンラインでは自宅で「いつもと同じ場所」から抜けることなく、特別感がなくなります。

 それから、通常ライブには、同じ音楽を他の人達とその場で共有する楽しさがあると思うのです。知っている人が居なくても、一曲終わるごとに起こる拍手や、他の人達の息遣いで、演奏に対する感想を言葉にしなくても、お互い伝え合うことができます。

「あー、この曲は素敵だった。隣の人もそう思っているみたい。」という事がオンラインでは起こりません。独りでライブ配信を聴いている限りは、その感動を伝えること、受けることが難しくなります。中川貴恵  

 家で独り、ライブ配信を聴いていた私は、一曲毎に拍手しながら「あー、いい音だ。パーカッションすごいね!」というように、感想を口にしておりました。ライブに興味のない息子が、その独り言を聞いて「何?なんか言った?」と向こう側から聞いてくるたびに「いいのよー、このパーカッションが!」などと素晴らしさを伝えたいのだけど、分かってもらえない、感想を共有できないというもどかしさがあり、そこが少し残念でもありました。誰かと一緒にオンラインで聴けば、そのような残念な思いはしないのでしょうが。

 それにしても、早く安心してライブ等へ行けるようにならないかなーと、心から思う毎日です。