Tacae Nakagawa

Professional Singer

声を出して自分だけのスイッチ
(切替え)を押してみませんか?

音だますいっち Vol.8

 先日、朝ご飯の支度をしていると突然、受験生の次男が「オレ、ラッパーになる。出願書書くより、リリック(歌詞)書かなきゃ。」と言い出しました。「はぁーん、急に受験への自信がなくなったんだろうな。」と思いましたが、それは指摘せず「ラップって、すごく言葉知らなきゃできないもんね。センスも必要。いいんじゃない?わたしもやろうかなー。」と返事しました。すると、そういう私に「おばあちゃんでラッパーの人がいるよ。」と、写真を見せてくれたのです。

 その方は、68歳のラッパー・MCでこ八さんという方で、お孫さんとヒップホップユニットを組んでいらっしゃるのです。でこ八さんは難病を抱えていらっしゃいますが、ラッパーを続けることで症状もよくなっているそうです。

 好きな音楽をする事で、魂も輝いてくるのでしょうか。お孫さんと一緒、というのも幸せを感じて心にハリが出ると思いますし、単に声を出す事は体を使うことですから、簡単な運動をしているという点においても健康になる要素があるとも思います。いずれにしても、興味深い話です。

 そもそもラップとは何でしょう?ラップとは音楽の手法、歌唱法の一つで「韻律、リズミカルな演説、ストリートの言葉」を組込み、バックビートや伴奏など様々な方法で唱えられるものです。

 ラップは音楽ではないとおっしゃられる方もいらっしゃいますが、私は言葉のセンスやリズム感がなければできないことだと思いますし、発音がはっきりしていないとせっかくの言葉が聞こえませんから、ラッパーの方々は立派な歌手で、ラップは立派な音楽だと思います。

 「私はあなたみたいに自由な発想ができないから羨ましいな。それに、目標が見つかった時のエネルギーはすごいよね。スイッチが入るとすごい頑張りを見せる。私は生まれ変わったら、あなたになりたい。」と心から次男に言いました。なんだかその時は本当に、次男と一緒にラッパーを目指すのも悪くないかも知れない、とも思ったのです。

 今朝も次男はラップを唱えながら起きてきました。夜、お風呂場からも彼のラップが聴こえてきます。受験の準備もラップに乗りながらしているようです。ラップ音楽は当分、彼の生活を支え、音だまとして彼のスイッチを押してくれるのでしょう。