Tacae Nakagawa

Professional Singer

声を出して自分だけのスイッチ
(切替え)を押してみませんか?

音だますいっち Vol.9

 今回は、言葉によってスイッチが入ったという体験をお話しします。

 私は幼い頃、低血圧でした。小学校の朝礼の時は必ず貧血で座り込んでいた子です。たくさん食べても太らず、便秘気味で、典型的な胃下垂タイプだと言われていました。ところが、ある日をきっかけに低血圧が治り、貧血もなくなったのです。

中川貴恵 あれは大学1年生になったばかりのこと。その頃、低血圧の私は目覚めも悪く、朝はボーッとしていました。ある日、そんな私に父が「どうしてお前はニコニコッと笑顔で、おはようって言えないんだい?」と言いました。その言葉を聞いて「それはそうだな。朝から顔を合わせた娘がムスッとしていたら、嫌な気分だろうな。」と思ったのです。次の日から、気分が乗らなくても笑顔で「おはよう。」と言うことにしました。

 それから一ヶ月くらい経った頃でしょうか。気が付くと、いつの間にかスッキリ目覚められるようになっていました。朝も気分が良くなり、活発に動けるようになりました。その後少しして、血圧を測る機会があったのですが、正常値になっており、これはもう、低血圧ではなくなったと自覚したのです。

中川貴恵 低血圧でなくなると、性格も前向きに変わっていきました。やる気も出てきましたし、それによって自分の意見を持てるようになり、また、それを言えるようにもなりました。それまでは「どちらでもいい。みんなの言う通りでいい。何でもいい。」という子でした。

 父の言葉が私にスイッチを入れてくれたのです。あの時、あの言葉で、「なんて自分は甘えているのだろう。」と思いました。父にも「甘えるんじゃない。」という気持ちが、もしかすると、あったのかも知れません。あの言葉がなければ、私は今でも低血圧で、朝も起きられず、後ろ向きなままだったでしょう。何気ない朝の会話の一つだったかも知れないその一言は、私の人生を大きく変えたといっても過言ではないでしょう。

 父の言葉は大変ありがたかったと思います。また、素直にその言葉を聞くことのできた、あの頃の自分も褒めてあげようと思います。