Tacae Nakagawa

Professional Singer

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音だますいっち Vol.28

 「あめふり」という童謡を、皆さんご存知だと思います。「ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン♪」で締めくくる、あの歌です。

 幼い頃、雨の日はよく、母とこの歌を歌いながら歩きました。

中川貴恵 小学生になると、突然の雨で傘がない時には、この歌の様にお母さんが傘を持って来てくれたらいいのに…と何度か思いました。それでも、忙しい母が一度だけ私の傘を持って迎えに来てくれた時は、すごく嬉しかったのを覚えています。

 私も、子供達を迎えに行った事が何度かあります。しかし、同じ回数くらい、仕事で迎えに行けない時もありました。そんな時は「お友達の傘に入れてもらってるかな?それともずぶ濡れで帰ってきてるかな?」と気になって、何度も時計と雨空を見たものです。母もきっと、迎えに来られなかった時は、こんな風に気にしていてくれたことでしょう。自分が母親になって、母の気持ちがやっとわかりました。雨の日は今でも、そんな母を思い出しながら、童謡「あめふり」を口ずさんで歩きます。

中川貴恵 先日、突然雨が降ってきて、最寄駅で「どうしようか?」と思っていると、改札横に傘が沢山並んでいるのが見えました。近寄ってみると、携帯でアプリを取得し登録するだけで、そこにある傘を24時間70円で貸してくれるという説明書きがありました。早速、借りてみる事に。アプリを取得して、登録して、ほんの2分ほどで傘を借りる事ができました。

 その傘は大きくて、男性でも女性でも持てるデザインになっていて、息子達にも「この傘かわいいね。どうしたの?」と好評でした。しかも、リサイクルされたビニールを使っているとの事。日本はビニール傘の消費が世界一だそうですから、エコに繋がるいいシステムだと思います。これで間に合わせのビニール傘を買わなくて済みますし、留守番している方も、お迎えを気にしなくていいのです。携帯ひとつで傘もすぐに借りられる、便利な時代になりました。

 だけど、「あめふり」のような情景が、歌と共に風化してしまったら…それはすごく寂しいな、と思うのでした。