Tacae Nakagawa

Professional Singer

声を出して自分だけのスイッチ
(切替え)を押してみませんか?

音だますいっち Vol.29

 池袋の東京センターへ向かう時、いつも「サンシャイン通り」という道を通ります。サンシャイン60が近いこの辺りには、「サンシャイン60通り」と「サンシャイン通り」と、名称が若干ややこしい2つの道があります。

中川貴恵 「サンシャイン60通り」は映画館や店舗が立ち並ぶ東急ハンズまで続く目抜き通りで、私が通っている「サンシャイン通り」はそれよりも一本中に入っている道です。途中には小さい広場のようなスペースがあったり、豊島区の歌碑や花壇があったりして、ちょっとした散歩道のような趣があります。

 毎回「サンシャイン通り」を通るには理由があります。それは、音楽です。通りのスピーカーから、朝は清々しいモーツァルトなどのピアノ曲が、昼間は軽快なジャズピアノが、たまにピアノコンチェルトなどのオーケストラ曲も聴こえてきます。

 しかし、ある時から音楽が聴こえてこなくなったことに気付きました。あれは1回目の緊急事態宣言の頃だったでしょうか。それ以来1年間、通りから音楽が無くなりました。無くなって思ったのは、随分とあの音楽で氣持ちの切り替えができていたのだということです。中川貴恵朝は寝不足のボーッとした頭をスッキリさせてくれました。昼間、せかせかと急ぎ足で通る私の氣を、何度となく落ち着かせてくれました。楽しい時にはもっと心踊る氣分にさせてくれました。そんな音楽が無くなってしまったのはとても残念です。

 思い切って豊島区商店街連合会へお電話して、「サンシャイン通り」に流れる音楽で心救われた事、聴こえなくなって残念に思っている事をお伝えさせていただきました。担当の方が仰るには、緊急事態宣言が原因ではなく、なんと、スピーカーの調子が悪くなったからという事でした。最近、新しいスピーカーに取り替えたので、様子を見ながら、また音楽を流してくださるとのお話を伺うことができました。思い切って聞いてみて良かったです。

 皆さんが、この原稿を読んでくださっている頃には、通りにまた、音楽が溢れているかもしれません。そう思うと、楽しみで、ワクワクしています。