Tacae Nakagawa

Professional Singer

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音だますいっち Vol.30

中川貴恵 今年の牡丹はよい牡丹

 お耳をからげてすっぽんぽん

 も一つおまけにすっぽんぽん

という童歌を思い出しました。

 今朝、洋服の裾をまつり縫いをするため、針に糸を通そうとしていたのです。近頃、近くが見えにくく、少々手間取っているところへ、長男が「何してるの?」と言ってきました。「かがろうと思って」というと、「何?それ?どんな言葉?」と言うので、こう言う事だと洋服の裾を見せて伝えると「まつるというのはわかるけど、かがるっていう言葉があるのか、わからない」と言い出し、調べ始めました。

 その時、「からげる」という言葉が一緒に出てきて、初めてその言葉の意味を知ったのですが、その途端、冒頭の童歌の意味が気になり出し、歌がグルグルと頭から離れなくなりました。それは魔法の言葉のように私の頭や耳を占拠してしまったのです。

 この童歌は、輪になって鬼を囲み、歌の最後から鬼ごっこに繋がる…という遊び歌です。歌が終わると「誰かさんの後ろに蛇がいる〜」「私?」「違う〜」というようなお決まりの対話をしてから、鬼ごっこへと進みます。

 ところで「からげる」という言葉は「紐などで縛ってまとめる、くくる」と言う意味と「着物の裾を捲り上げて留める」意味があります。歌の意味を考えると、この場合の「からげる」は縛ってまとめることでしょう。歌の元になるのは「牡丹」ではなく「レンゲ」だそう。どうやらレンゲの花を編んで頭や体に巻きつけるところからきているらしいのです。「すっぽんぽん」は真っ裸という事ではなく、小鼓のポンポンという音に乗せて踊る様子なのだそう。それを合わせると、レンゲの茎を耳に絡ませて小鼓のポンポンに合わせて踊る…という情景が見えてきます。

中川貴恵 もう一度、この童歌を歌ってみました。そういえば、昔、母と一緒に歌ったなぁ〜。幼い頃から歌のある暮らしをしていたんだな、という事を思い出し、有り難く思いました。

 余談ですが、母はよく、裾を「くける」とも言っていました。「くける」とは糸が布から見えないように縫い込むこと。

 裾を縫う…と言えば早いのですが、「かがる」という一言から、色んな言い方、意味があることを知り、そしてこの童歌の意味にまで発展したのは、長男のお陰でもありますね。