Tacae Nakagawa

Professional Singer

声を出して自分だけのスイッチ
(切替え)を押してみませんか?

音だますいっち Vol.10

 「歌が上手くなりたい」そういう言葉をよく聞きます。「歌が上手い」というのはどういう状態のものでしょう?要素は沢山あると思いますが、3つに絞ると「声がいい」「音程が安定している」「リズムに乗っている」だと思います。この3つがあれば、カラオケでさらっと歌っても「上手い」と言われる事でしょう。

中川貴恵 しかし、「歌が上手い」には、もう一歩深い意味もありますね。「感情を豊かに表現する」ことです。感情を表現するには、詩を読む力と声をコントロールする技術が必要となってきます。そして、そこに“氣”が加わることにより、いっそう聴いている人の心をとらえるのだと思います。

 私は、コンサートは聴いてくださっている方々との氣の交流だと思っています。

「ご機嫌いかがですか?心を込めて歌わせていただきます。」と思い、歌わせていただくと、「ここで聴いていますよ。」という温かい氣を感じます。それが一人一人に満ちてくると、会場一杯の氣を感じて…それをまた歌を通してお返しする…そのような場だと思っています。

 経験上、その“氣の交流”の場を作るには、「歌詞や楽譜に頼りすぎてはいけない。歌詞や楽譜にかじりついているうちは、氣を込めて歌っていても、氣を伝えるに至らない。氣の交流にはならない。」のだと言うことを知りました。

 それから、その歌を愛すること。「ああ、何ていい歌なんだ。」と感じる氣持ちが聴き手には伝わります。

 音程やリズム、発声はレッスンで教える事もできます。けれど、氣に関しては、自分で感じていくしかない事です。辛い事も、嬉しい事も、自分の氣の栄養になると思っています。しかし、辛い事を溜め込んでしまうと、バランスを崩して体が疲れてしまいます。

 私は真氣光の時間で、心も体もリラックスした状態をたっぷりと感じます。そして、歌う時にもその状態を作れるようにしています。

 難しい事を書き並べてしまいましたが、簡単に言ってしまえば、聴き手の事を想いながら、自分の好きな歌をリラックスして歌えれば、それはきっと聴いている人の心に響く歌になると思います。そこには「上手い」「下手」はありません。「心のこもった、氣に満ちた」歌があるだけです。心と体が疲れた時は、氣の充電をしてみてください。話し声にも、歌声にも、それは現れます。

 ぜひ、大切な人に大好きな歌を歌ってください。一緒に歌うのもいいですね。それが歌の原点のように思います。