たとえばどういうことに使えるのか。パネルディスカッションでは、いくつも魅力的な案が出された。それが実現するかどうかはともかく、今はアイデアを出し合う時期なのだろう。
いったいこの空き家を何に使うのか。その用途を考えるのが最初にやることだ。
住むだけというのもありだが、何か地域のために役立つ活用法を考えたいというのが彼らの意図だ。そして、それが起爆剤になって、空き家のことをみんなが考えるようになればいい。そうなれば、空き家の所有者も何か有効利用できればと思うようになる。
たとえば、今は隣近所が疎遠になっているからもっとみんなが集える場所を作りたいと考えたとしよう。そのためにはどうするか。カフェを作ろうか。古い家は趣があって、みんなが落ち着いて話ができるだろう。
次にその空き家が用途に合った空間かどうかを見る。ひょっとしたらカフェだけではスペースが広過ぎるかもしれない。カフェがそこを独占しなくていいじゃないか。じゃあ、何にする。ワーキングスペースはどうだろう。だれでもここへ来て仕事ができるような場所を併設しよう。ワーキングスペースを使うのは、地元の主婦の人が多いのではないだろうか。在宅で仕事をしたいのだけれども、子どもの面倒を見ないといけないという人も多いだろう。そういう人のために託児スペースも設けよう。近所の畑でとれた野菜を販売してもいい。
時間もシェアできるかもしれない。カフェが閉店したあと、夜はバーにしてもいい。趣味の集まりができる場所にもできる。勉強会もいい。
そうやって考えていくだけでも、一軒の空き家が生き生きと躍動し始める。エネルギーが満ちていく。
地域の人たちが集まり、仕事をする人もいて、子どもたちが遊んでいる。そういう空き家が地域に一軒でもあれば、地域全体に変化が起きてくることは想像できる。
全国的に廃校になった小学校を利用しようという動きも起っている。西多摩の方に、研修所として生まれ変わった小学校がある。宿泊ができてレストランがあって会議室や研修室がある。土日には各地からたくさんの人が集まってくる。地域をPRする部屋もあって、そこにたくさんの人が足を運んで、こういう場所なんだと知ってくれる。かつて子どもたちが学んでいた教室も再現されていて、小さな机に座って、昔を懐かしむ人もいる。
子どもたちが集まってきて校庭を走り回っている。小学校を中心に、地域が元気になっていっているのがわかる。
使わなくなった施設も含めて、活用できるものは上手に使うように工夫していく。そういう思いをもって、人が集まって話し合いをすれば、そこでコミュニケーションが広がっていって、地域は活性化していくはずだ。
アキヤラボのような団体があることを知れば、空き家をもつことになった人も相談ができる。ある人は、実家が空き家になりそうなので、そこを子どもたちが放課後に遊べる場にしたいと相談を持ちかけてきたそうだ。地域のためならと、家賃は破格の安さ。こういう申し出をどう生かしていくか。そこは知恵の出しどころだ。
今は負の遺産である空き家。しかし、考え方、使い方ひとつで、プラスに変えることもできる。空き家を何とかしようという団体は各地でできているはずだ。問題意識をもっている人も増えている。これからは、もっと多様で斬新な活用例が出てくるだろう。
少子高齢化という大きな波はすでにきている。そこに飲み込まれて溺れてしまうのではなくて、その波に乗ってしまうことを考えていくことが、これからの時代を生き延びていくには必要なのではないだろうか。
もし空き家をもっている人がいたら、どうすればその空き家を生かせるか、一考してみてはどうだろうか。