ハイゲンキ行動派たちの新世紀 vol. 202-1
月刊ハイゲンキ
2019年2月号 掲載記事

空き家が増加中。何にも使われず放置されているものも多い

 わが家の近くでは次々と大型マンションが建設されている。都心まで通うのに都合のいい場所ということでとても人気があって、住む人が増えてきている。しかし、同時に高齢化が進んで、住み手のなくなった空き家が増えてきているのも現実だ。大きなショッピングセンターはにぎわっているが、商店街にはシャッターが閉まった店が並ぶ。町全体がとてもアンバランスになっているのだ。

 これは全国的な傾向で、2013年度の調査では、空き家の総数がこの20年で18倍(448万戸→820万戸)に増加しているそうだ。

小原田泰久 世帯数の増加分以上に新築住宅の数が増えている。空き家が増えるのは当然だ。その傾向はますます顕著になっていく。かつては大きな土地に一戸建てが建っていた。しかし、その持ち主が亡くなってしまうと、都会だったら大変な相続税がかかってくる。とても支払えない。となると、土地を売るしかない。売られた大きな土地は何区画かにわけられて建売住宅となるか、マンションが建つかだ。つまり、1戸だった家が、売却、建て替えによって、戸数が何倍あるいは何十倍にも増えてしまうのだ。

 空き家と言ってもいろいろとあって、通常は4種類にわけられるようだ。まずは、賃貸用。アパートやマンションで人が入っていない空き室を言う。売却用の住宅。これは売りに出ていてまだ売れていない住宅のこと。二次的住宅というのが普段はだれも住んでいない別荘など。そして、その他として賃貸用でもなく、売却を待っている住宅でもなく、別荘でもないのに空き家になっているところがある。当面、大きな問題になっているのは、4番目のその他の住宅で、この20年で21倍に増加して、318万戸もある。特に木造の一戸建てが220万戸と非常に多い。

 このデータを見れば、現代の空き家状況はだいたい想像がつくだろうと思う。

 子どもたちが外へ出てしまい、老夫婦だけで住んでいた家が、いろいろな事情で空き家になっていると思われる。亡くなったり、施設に入ったり、子どもたちに引き取られて、住む人がなくなってしまった家がどんどんと増えてきているのだ。

 不動産会社にしても、新築住宅ならまだ売りやすいけれども、中古住宅はなかなか売れないという現実もあって、だれも住んでいない古い家がどんどんと増えていく。

 空き家が増えるとさまざまな問題が起こってくる。

 空き家になればほとんどの場合、放置されることになる。放っておけば朽ちていく。そんなときに台風でもきたら大変なことになる。屋根が飛んでしまえば、隣近所は大迷惑だ。地震があれば、壊れて道路を塞いでしまうこともあるだろう。集中豪雨で浸水すれば、蚊やハエ、ネズミなどが発生して不衛生になってしまう。

 空き家があることで治安が悪くなることもある。犯罪者が身を潜める場所として空き家を使うことは想像がつく。空き家への放火も増えている。

 ゴミが不法投棄される。壊れかけた家があれば景観が悪くなる。

 空き家が増えていいことなどひとつもない。しかし、持ち主にも言い分がある。すぐに処分したり売却できない事情があるのだ。

 「どうして空き家にしておくのか」というアンケート調査があった。空き家のデータを集め、空き家を必要としている人とマッチングしようという動きは全国的に広がっている。しかし、空き家が必要だという人はいても、空き家を提供しようという人が少ないという現実があるそうだ。どうしてそうなるのか、このアンケート調査の結果を見るとよくわかる。

 空き家のまま持ち続けている理由。1番目は、物置として使えるから。わかるような気がする。狭い家にたくさんの物があふれているのはわが家も同じで、空き家があればそこへ移してしまえという気持ちになる。

 金銭的な問題も大きい。解体するにもお金がかかる。取り壊してしまうと固定資産税が高くなる。人に貸すにしてもリフォームしないといけない。果たして、それだけの費用をかける価値があるのか。どうしても躊躇してしまう。

 「特に困っていないから」「将来、子どもたちや親族が住むかもしれないから」「好きなときに処分したり利用したりしたいから」「仏壇など処分しにくいものがあるから」「さら地にしても使い道がないから」「人に貸すのは不安があるから」といった理由が並んでいる。 空き家を持ち続けると言っても、その空き家をどう使おうかという意志があるわけではない。取りあえずそのままにしておこうという後ろ向きの選択が、空き家をどんどんと増やす原因にもなっている。

これからは所有者のわからない空き家が増えてくる

小原田泰久 西東京市で「西東京市の空き家からまちづくりを考えるシンポジウム」というイベントが開かれた。西東京市は都心まで30分以内で出られる便利なところなので、マンションや新築の一戸建てを購入する人が増えている。しかし、その一方で、古い家は置き去りにされて、空き家が目立つようになっている。

 4050代を中心に、この状況を何とかしたいという人が集まって、数年前から空き家会議が始まった。彼らは自分たちの取り組みを「アキヤラボ」と呼んでいる。彼らが掲げるテーマは、「空き家」というのはネガティブなイメージがあるけれども、せっかく空き家があるなら、これをうまく利活用して、楽しい街にできないだろうかということだ。ユニークな面々が顔をそろえている。地域の工務店、不動産業者、タクシー会社の社長、地元で駄菓子屋を開いているデザイナー、クラフトビールのお店。地域活性化のコンサルタント。それに、中川会長が「今日も一日い氣い氣ラジオ」という番組をもっているFM西東京も参加している。だれもがビジネスとしてかかわっているわけではない。何でもおもちゃにしてしまう子どものような遊び心をもった人たちのようにお見受けした。空き家というのは、ただ単に住居として見るだけでは再生が難しい。さまざまな角度から利用法を模索する必要がある。そのためには、遊び心は必須なもののような気がする。また、そういう素養がないと、こういうことには頭を突っ込まないだろう。

 シンポジウムは、東京都の担当者、空き家を調査する金融関連の方の講演のあと、アキラボに取り組む人たちのパネルディスカッションというプログラムだった。

~次号につづく~