樋口さんの地元三重県では、樋口さんの講演と弁護士の河合弘之さんの対談が行われた。河合弁護士は、一連の原発訴訟で中心的な役割を果たす情熱の人だ。
河合弁護士は、「日本と原発」(2015年)「日本と再生」(2017年)という映画も作っている。少しでも多くの人に原発の危険性を知ってもらいたいと、自腹で制作したそうだ。「日本と原発」は、Youtubeで見ることができる。
https://youtube/WQvEdNXm_bk
対談で、樋口さんが「福島の事故はラッキーが重なった」と話しているが、ひとつ間違えば、東京にも人が住めなくなっていたという恐ろしい事実が、この映画を見ればよくわかる。
「原子力ムラ」と呼ばれる存在。原発は原子力ムラの人たちにとってみれば「金のなる
木」だ。そう簡単に手放そうとはしない。そんな構造も教えてくれる。
放射性廃棄物の問題も、まだまったく解決されていない。原発を稼働させれば、大量のゴミが出る。これを再処理して「もんじゅ」という原子炉で燃やせば、永久にエネルギーが確保できるという夢物語が語られ始めてから30年以上がたつが、夢は破れてお金ばかりがかかる。今はただ維持しているだけで、1日に5000万円もかかるのだそうだ。
青森には六ヶ所村再処理工場がある。ここも作ったものの動いていない。にもかかわらず、毎年約2700億円が再処理費用としてかかっているそうだ。
すべて私たち国民が支払っている。
放射性廃棄物が安全になるにはどれくらいの時間がかかるのか。何と10万年。気の遠くなるような年月を要する。
フィンランドでは、硬い岩盤を利用して最終処分場を作っていると言う。ここに10万年、廃棄物を眠らせておこうという計画だ。10万年前、地球でどんなことが起こったのか。ホモ・サピエンスが世界各地に居住地を広げていた時期のようだ。それから現代までに、海面の急上昇、大噴火、隕石の激突、氷河期・・・。地球全体に大きな影響を及ぼすような大変動はいくらでも起こっている。これからの10万年は地球が大人しくしてくれているという保証などどこにもない。
原発というのはそういう不完全であり危険に満ちた存在だということだ。事故があったら大変だということだけではすまない問題が山積みになっている。
にもかかわらず、日本は原発を再稼働させようとしている。
原子力安全委員会の前委員長の田中俊一氏は、こんな発言をしている。
「原子力安全委員会は、安全を審査しているのではなくて、基準の適合性を審査している。基準に適合しているかどうかは見ているが、安全だと申し上げているのではない」
専門家でも「安全だ」とは言い切れない原発。ましてや日本は世界有数の地震国。安全か危険か。そんなに難しい議論だとは思わないがどうだろうか?