小原田泰久〜行動派たちの新世紀 vol. 205
月刊ハイゲンキ
2019年6月号 掲載記事

原発は危険だと訴える正義と情熱の裁判官、弁護士

 今月の会長対談では元裁判官の樋口英明さんが原子力発電所の危険性についてお話してくださった。福島であのような大事故が起こったにもかかわらず、再稼働が始まっている日本という国の先行きは? 私たち国民が、もっと真剣になって考えないといけないことだ。

「日本の原発は安全だ」という神話はすでに崩れている

 会長との対談の翌日には、樋口さんは弁護士の集まりで、その翌週414日には、保団連という医師の集まりで講演を行なった。さらには、420日の広島、28日の地元三重での講演と続く。

 樋口さんの話はとてもわかりやすい。原発というと、とても難しくて素人にはわからないと決めつけてしまいがち。しかし、専門的な知識まで踏み込まなくても、危険かどうかは判断できるはずだ。

 まして、2011年にはあのような大事故が起こっている。福島の人はもちろんだけど、遠くに住んでいても、原発が次々と爆発するテレビの映像には背筋が寒くなったはずだ。そして、8年がたった今でも、故郷へ帰れない人がたくさんいるし、「避難解除」とまるで終息したかのようなニュースが流れるが、果たして大丈夫なのかと疑心暗鬼になっている人はたくさんいるだろうと思う。

 ひとたび何か事故があれば大変なことになるのは明らかだ。「日本の原発は安全だ」という神話が長くあったけれども、あれだけの事故を見せられれば、もうその神話を信じることができなくなって当然だ。

そういう状況を踏まえて、「これからも原発に依存するのかどうか」を選択していく必要がある。

「若い人たちにももっと関心をもっていただきたいですね」

 樋口さんの講演にはたくさんの方が集まるけれども、ほとんどが中高年だそうだ。この世代の人たちは、スリーマイル島やチェルノブイリで深刻な原発事故が起こっても、「日本の原発は絶対に安全」「他の電源に比べてコストが安い」といった原発を推進する方たちの言葉を信じ、次々と原発が建つのを容認してきた。それが日本が壊滅するかもしれない大事故への伏線になったことに責任を感じて、本当のことを次世代に伝えないといけないと考えているのではと、樋口さんは推測している。

 でも、本当に原発について考えないといけないのは若い人たちだ。ひとたび大事故が起これば、彼らはもろに路頭に迷い、放射能の脅威にさらされなければならない。

 中高年の責任というのは、若い人たちに原発の危険性を伝えることだろうと思う。彼らがもっと原発の是非に関心をもつようにリードしていくことだ。

原発の廃棄物は地下深くに10万年も保存しておかないといけない

 樋口さんの地元三重県では、樋口さんの講演と弁護士の河合弘之さんの対談が行われた。河合弁護士は、一連の原発訴訟で中心的な役割を果たす情熱の人だ。

 河合弁護士は、「日本と原発」(2015年)「日本と再生」(2017年)という映画も作っている。少しでも多くの人に原発の危険性を知ってもらいたいと、自腹で制作したそうだ。「日本と原発」は、Youtubeで見ることができる。

https://youtube/WQvEdNXm_bk

 対談で、樋口さんが「福島の事故はラッキーが重なった」と話しているが、ひとつ間違えば、東京にも人が住めなくなっていたという恐ろしい事実が、この映画を見ればよくわかる。

「原子力ムラ」と呼ばれる存在。原発は原子力ムラの人たちにとってみれば「金のなる

木」だ。そう簡単に手放そうとはしない。そんな構造も教えてくれる。

 放射性廃棄物の問題も、まだまったく解決されていない。原発を稼働させれば、大量のゴミが出る。これを再処理して「もんじゅ」という原子炉で燃やせば、永久にエネルギーが確保できるという夢物語が語られ始めてから30年以上がたつが、夢は破れてお金ばかりがかかる。今はただ維持しているだけで、1日に5000万円もかかるのだそうだ。

 青森には六ヶ所村再処理工場がある。ここも作ったものの動いていない。にもかかわらず、毎年約2700億円が再処理費用としてかかっているそうだ。

 すべて私たち国民が支払っている。

 放射性廃棄物が安全になるにはどれくらいの時間がかかるのか。何と10万年。気の遠くなるような年月を要する。

 フィンランドでは、硬い岩盤を利用して最終処分場を作っていると言う。ここに10万年、廃棄物を眠らせておこうという計画だ。10万年前、地球でどんなことが起こったのか。ホモ・サピエンスが世界各地に居住地を広げていた時期のようだ。それから現代までに、海面の急上昇、大噴火、隕石の激突、氷河期・・・。地球全体に大きな影響を及ぼすような大変動はいくらでも起こっている。これからの10万年は地球が大人しくしてくれているという保証などどこにもない。

 原発というのはそういう不完全であり危険に満ちた存在だということだ。事故があったら大変だということだけではすまない問題が山積みになっている。

 にもかかわらず、日本は原発を再稼働させようとしている。

 原子力安全委員会の前委員長の田中俊一氏は、こんな発言をしている。

「原子力安全委員会は、安全を審査しているのではなくて、基準の適合性を審査している。基準に適合しているかどうかは見ているが、安全だと申し上げているのではない」

 専門家でも「安全だ」とは言い切れない原発。ましてや日本は世界有数の地震国。安全か危険か。そんなに難しい議論だとは思わないがどうだろうか?