日本代表に外国人選手がたく さんいたことに違和感をもつ人 もいただろう。ラグビーならでは のルールだ。ラグビーは国単位で はなく、所属する協会単位で代 表チームが作られる。キャプテン のリーチマイケルはニュージーラ ンド生まれ。彼は日本国籍を取得 しているので日本代表になれる。 ほかにも日本国籍でなくても、3 年以上継続してその国でプレー していれば代表になれるといっ たルールもある。 国籍や人種を超えて代表とし て戦うことは、時代を先取りして いるように思えてならない。国と いう枠にとらわれず、縁があって 同じ地域でプレーをする選手が 協力し合ってワールドカップを 戦う。本当の意味での国際化につ ながるのではないか。 政治では日韓関係がぎすぎす しているが、韓国人の具智元(グ・ ジウォン)選手が日本代表として 大活躍した。「具くんはやさしく て力持ち」と、癒し系のキャラが 大人気だ。日韓の壁など具くん の笑顔で粉々にできるのではな いか。ワールドカップ出場4回目 で、日本国籍も取得しているベテ ランのトンプソンルーク選手は ニュージーランド生まれだが、日 本、特に大阪が好きで、流ちょう な大阪弁でインタビューに答え ている。
「好きな町に住んで、その国の 代表として戦う。それがラグビー のいいところ」
何とも粋なコメントだ。聞いて いてうれしくなってくる。
ワールドカップ前は外国人が 多いことに反発する意見もあっ たが、彼らが大活躍し、いかに日 本代表を愛しているか、彼らの思 いが浸透することで、外国出身選 手への抵抗感は消えていった。
そもそもラグビーは、体が小 さくてもできるポジションがあ る。さまざまな個性を生かせるス ポーツだ。大きな人がいて小さな 人がいて、さまざまな国の、さま ざまな人種の人がチームを構成 し、仲間とともに体を張って勝利 を目指す。ときにはエキサイトし てラフなプレーも飛び出すけれ ども、試合が終わればお互いをた たえ合う「ノーサイド」の精神。
「ラグビーが好きになった」
今回のワールドカップでラグ ビーに魅せられた人は多い。体を ぶつけ合う迫力だけでなく、大げ さに言うなら、それが本来の地球 の姿だからではないだろうか。
ワールドカップを通して、たく さんの美しい話が世界に発信さ れた。試合が終わったら観客席 に向かってお辞儀をする。どこの 国でもやっているものと思ってい たのだが、日本独自の風習のよう だ。世界中にお辞儀が広がるとい い。台風の被害者への黙とう。暴 風雨のあとでのグランド整備。中 止になれば日本のベスト8が決 まるわけだから無理をすること もないのにと思うが、相手チーム の立場に立てば、戦わずして予選 落ちすることになる悔しさはど れほどのものだろう。スコットラ ンドの選手、国民の気持ちをおも んばかっての徹夜での作業だっ たのだろう。台風の被害があった 釜石のためにボランティア活動 をしてくれたカナダやナミビア の選手たちにも感謝だ。
2020年は日本でオリン ピックが行われる。金メダルの 数ばかりではなく、勝敗を超え てのすばらしく感動的なドラマ をたくさん体験できることを望 みたい。