ミツバチがいなくなると人類 は滅亡するとアインシュタイン が言ったそうだ。ミツバチは植物 が受粉して実をつけるのにとて も重要な働きをしている。受粉が できないと、実ができなくなる。 人間の食料になるのはほとんど の場合、実の部分。ミツバチが受 粉してくれないと、食べ物がなく なり、人類は生きていけなくな る。それを危惧したアインシュタ インのメッセージだろうと思う。
近年、ミツバチが突然姿を消し てしまう現象が問題になって、ア インシュタインの危惧した状況 が現実になった感があった。農薬 の影響だろうと言われている。
ピンチが訪れれば何とかしよう という人が現れる。高安さんらの 活動を見ていて、ミツバチを守り広 げようとしている人がいることを 頼もしく感じた。高安さんばかり ではなく、世界中でミツバチの住み やすい環境を作ろうという運動が 起こっている。
高安さんの話を聞いていると、 可能なら自分もミツバチを飼っ てみたいと思わせられる。実際に 銀座のビルの屋上でミツバチを 飼い、ハチミツをとって商品にし ているという行動力にも魅かれ るものがある。日本全国、あちこ ちで養蜂の指導も行っている。
高安さんから「アーユルヴェー ダとハチミツ」というイベントの 案内が届いた。講師の上うえ馬ば 場ば 和夫 先生は、内科医師でありアーユル ヴェーダの専門家でもある。東西 医学の融合をライフワークとし ている方だ。
アーユルヴェーダとは何か。イ ンドの伝統医学ということで知 られている。もともとはサンスク リット語で「生命の科学」という 意味だそうだ。健康法や治療法 のように思われているが、単に健 康長寿、病気治癒を目的とする のではなく、あくまでも一つの生 命体としてどう生きるのが幸せ なのかを追求する科学であり智 慧だと言う。
「よく健康寿命という言葉が使 われるようになりました。いくら 長生きでも寝た切りでは意味が ありません。健康で長生きするこ とが大切だという考え方です。私 は、それをもう一歩進めて、幸福 寿命が大事だと思います」
(上馬場医師)
そのためにも古代インドの宇 宙観が重要な役割を果たすとい うのが上馬場医師の考え方だ。 「現代社会は西洋的な二元論を中心に物事が進んでいます。善と悪、成功と失敗、損と得、生と死、病気と健康、あなたと私と、2つに分けて物事を考えたり判断したりするのが現代人です。その考え方が、政治や経済ばかりではなく、環境、医療、福祉、教育といったあらゆる分野でさまざまな問題を引き起こしています。
その二元論が少しずつ崩れてきています。たとえば、コンピュータは0か1の二元論の世界でした。しかし、量子コンピュータでは0と1ともうひとつ、0でも1でもあるという要素が追加されて計算能力が莫大に大きくなりました。
世の中というのは、白と黒だけに分けるものではなく、その間には限りないグレーがあるわけです」
そういう考え方ができる人たちが、ミツバチの大切さに反応し、環境や健康のこともグレーの領域で考えようとしているのではないだろうか。